現実にそぐわない人員配置基準


定められている人員配置だと給与が低下する

介護施設では入居者の定員数に対して職員の配置基準が決められています。たとえば特別養護老人ホームでは入居者3人に対して介護職員や看護師は1人以上配置することが、介護老人保健施設では入居者と介護職員・看護師が3:1以上になるように配置することが決められています。しかし、介護報酬は「3:1」の人員配置を上限としているため、配置されている職員の人数が増えると職員の給与水準が低下してしまいます。
また、実際の介護現場では「3:1」のシフトだとシフトが組めず労働基準法に反してしまうため、「2:1」に近い配置にしている施設も少なくありません。このように施設独自の人員配置を行っている施設は全体の58%にも上っています。現行の人員配置基準では現行の人員配置基準では職員の給与や介護サービスの質を保証できないと言われていますが、政府は業務の効率化のために人員基準の緩和を提案しています。

定められている人員配置だと給与が低下する

現場からは反対の声が上がっている

介護現場の効率化を目的に介護ロボットやセンサーなどの新テクノロジーの導入が進められていますが、介護サービスの質が確保されるのか疑念を抱いている人も少なくありません。
確かに新テクノロジーを導入することによって介護職員の負担を軽減する業務もあるかもしれませんが、介護ロボットの安全管理など新たな業務が発生する可能性があります。介護ロボットを導入したからと言って必ずしも人手不足が解消できるわけではないのです。
また、効率化できると大きな期待が寄せられている新テクノロジーですが、導入効果が十分に検証されているわけではありません。それなのに、人員配置基準を変更してしまうのは時期尚早だと言えるでしょう。効率化ばかりを重視するのではなく、安全を確認しながら慎重に進めていくことが重要です。

効率化よりも労働環境の改善に取り組むべき

介護ロボットなどの新テクノロジーの導入が進められていますが、現在老人ホームで介護職員として働いている人たちが確実に運用できるのか、といった懸念もあります。人手不足を解消するために業務の効率化を求めるのは大切なことですが、生産性の向上を図る前に、介護職員の負担を減らすなどの労働環境を改善する方が先決ではないでしょうか。
実際に2018年に全労連・介護ヘルパーネットが行った調査では、「現状の人員配置基準ではケアを提供する時間が少なく、利用者1人ひとりに対する介護サービスの質が低下する」といった結果も出ています。こうした状況を改善するためにも人員配置基準の引き上げを早急に検討する必要があります。

課題と向き合う方法は

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